ニュースの概要
物流専門メディアのLogi-Todayによると、日興運送が坪単価9,000円という価格を掲げ、危険物倉庫を全国で一斉に展開する。危険物の保管には消防法に基づく許可や届出が必要である。扱う物質の類別や指定数量に応じて、建物の構造、保管区画、設備、荷役の手順まで細かく決まっている。そのため、空いている一般倉庫を改装して使い回すことが難しく、供給が増えにくい分野だった。化学品、塗料、溶剤などを扱う荷主にとっては、法令への対応を済ませた保管場所を複数の地域で確保できる可能性が出てくる。価格を明示して打ち出した点も、この動きの特徴といえる。
引用元: 日興運送、坪9,000円の危険物倉庫を全国展開へ(Logi-Today)
分析・見解
一般倉庫と違い、危険物倉庫は増やしにくい
危険物倉庫は、屋根と床があれば成り立つ一般倉庫とは別物である。指定数量(=法令が定める、許可が必要になる量の基準)以上を貯蔵するなら、市町村長などの許可が要る。指定数量の5分の1以上でそれを下回る場合も、条例で届出が求められる。壁の構造、換気、電気設備、流出を防ぐ措置、区画ごとの貯蔵量など、満たすべき条件は多い。
建てる側から見れば、投資は重く、近隣との調整も必要になる。既存の倉庫に後から機能を足すのも簡単ではない。供給が絞られてきたのは、自然な結果である。
坪9,000円は、安さより比べやすさで読む
9,000円が高いか安いかは、比べる相手で変わる。普通の倉庫と並べれば高めに見えるだろう。ただ、危険物倉庫はもともと相場が見えにくい市場である。空きが出ればすぐ埋まり、価格を比べる場面も少なかった。そこへ単価を掲げて全国で出す意味は、値引きよりも、市場に一本の物差しを置く点にある。
もっとも、坪単価だけでは総額は決まらない。保管する類、数量、入出庫の回数、荷役の人手で費用は大きく動く。月に数回しか動かない在庫と、毎日出荷する在庫では、一品あたりの負担がまるで違う。保管料に加えて、荷役料、危険物取扱者の立会い費用、最低契約面積まで見て、はじめて比較になる。
全国一斉の展開は、拠点を二重にする力を持つ
化学品の荷主は、在庫を1か所の危険物倉庫に集めがちだった。拠点を増やすこと自体が難しかったからだ。しかし、火災や地震、浸水が起きれば供給は止まる。同じ条件の拠点が全国にあれば、在庫を分けて持ち、非常時には別の拠点から出荷できる。ドライバーの労働時間の上限が厳しくなり、長距離輸送が難しくなっている点も、顧客の近くに置く動機を強める。
運送会社が運営することにも利点がある。倉庫と輸送を同じ会社が担えば、危険物対応の車両との受け渡しがなめらかになる。一方で、保管も輸送も一社に偏ると、あとから他社へ乗り換えにくくなる。便利さと身動きの取りやすさは、引き換えになりやすい。
本当の価値は、各拠点の許可内容で決まる
全国展開といっても、拠点ごとに許可された類や貯蔵量は違うはずだ。引火性液体向けの拠点に、酸化性の物質は置けない。同じ貯蔵所に一緒に置けない組み合わせもある。つまり「全国に危険物倉庫がある」ことと「自社の品目を置ける」ことは別の話である。
また、市町村ごとに条例や運用が少しずつ違う。同じ運営会社でも、拠点によって手続きや対応に差が出る可能性がある。拠点ごとの許可内容や取り扱える品目の情報がどこまで公開されるかが、この展開の評価を分けるだろう。
ビジネスへの影響
契約前に、許可内容と数量を拠点ごとに照らし合わせる
最初にやるべきことは、自社の品目を整理することである。品名、危険物の類、最大の保管量、荷姿を一覧にする。そのうえで、候補の拠点に許可の内容と、残りの貯蔵可能量を書面で確認する。混載できるかどうかも欠かせない確認事項である。
あわせて、荷役の体制も見ておきたい。危険物取扱者が常駐するのか、立会いは別料金なのか、夜間や休日の入出庫に応じるのか。ここが曖昧だと、安い坪単価の利点は簡単に消える。
在庫の置き場所を、地域ごとに見直す好機にする
主力の在庫を1か所に置いているなら、今回の動きは分散を試算する良い機会になる。やり方はこうだ。まず、出荷先の地域別に、現在の輸送費と在庫の回転日数を出す。次に、一部を近隣の拠点へ移した場合の保管料と輸送費の合計を比べる。保管料が少し上がっても、輸送の手間と欠品の危険が下がれば、全体では得になることがある。
災害時の備えとしても、数量の2割から3割を別の地域に持つだけで、供給が止まるリスクは大きく変わる。
価格だけで切り替えず、撤退の道筋も決めておく
契約期間、最低契約面積、解約の条件、事故が起きたときの責任の分け方、保険の範囲は、必ず比べる。小さく始めるなら、回転の遅い在庫か、代替品のある品目を選ぶとよい。半年ほど運用して、荷役の品質や連絡の速さを確かめてから広げれば、失敗の費用を抑えられる。
