このページはPR・広告を含みます

CHEMICAL LOGISTICS / 05

化学品の「紙」を、
制度と仕組みから管理する。

安全データシートは、保管・輸送・取扱いの出発点になる情報です。化管法と労働安全衛生法の流れ、GHSとSDSの構成、DXサービスの公表情報を整理します。

安全データシートのバインダーと化学品の試薬瓶、表計算画面を映したノートパソコンが並ぶ机

SDSは保管・輸送・取扱いの出発点になる

最終更新日:

本ページは官公庁の公表資料と各社の公式情報から確認できた内容だけを整理しています。法令の適用や社内体制の判断に関する助言ではなく、確認の取れない項目は「公式サイト参照」と表記します。

危険物倉庫や化学品の物流では、荷物の中身を示す書類が、保管区分や輸送の手順を決める出発点になります。その書類が安全データシート(SDS)です。SDSは、化学品の名称、危険有害性、成分、取扱い上の注意、応急措置、保管方法、輸送上の注意などを、一定の様式で記載した文書です。荷主が作成して提供し、物流事業者は、これをもとに消防法上の危険物に該当するかどうか、毒劇物や高圧ガスなど他の法令の対象かどうか、同じ倉庫に置けない組み合わせがないかを確認します。

[PR]

ところが、SDSは化学品ごと、会社ごとに様式や記載の粒度が異なることがあり、改訂のたびに更新も必要です。取り扱う化学品の数が数千件規模になる事業者では、紙やPDFの管理が負担になります。この負担を和らげるために、SDSをデータ化して一元管理するクラウドサービスや、AIで項目を抽出するサービスが提供されています。

[PR]

このページでは、まず制度の側(化管法と労働安全衛生法)を整理し、次にSDSの構成とGHS、輸送時のイエローカードを確認します。最後に、SDS管理サービスの公表情報を小さな比較表で並べます。前提となる消防法の危険物の区分は消防法の保管規制と指定数量にあります。

化管法:SDS提供とPRTRの二つの柱

化学物質排出把握管理促進法(化管法)は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促し、環境の保全上の支障を未然に防ぐことを目的とした法律で、PRTR制度とSDS制度の二つを柱にしています。PRTR制度は、有害性のある化学物質が、どの事業所から、どれだけ環境中に排出されたか、または廃棄物として移動したかを把握して届け出る仕組みです。SDS制度は、対象の化学物質を他の事業者に譲渡・提供するときに、SDSを提供することを義務づける仕組みです。

対象となる化学物質の範囲は、令和3年(2021年)10月20日に公布された政令の改正により見直されました。経済産業省などの資料によると、第一種指定化学物質は462物質から515物質に、第二種指定化学物質は100物質から134物質になりました。新たな対象物質について、SDSの提供は令和5年(2023年)4月1日から始まり、PRTR制度に基づく新しい対象物質での届出は、令和6年(2024年)4月以降とされています。物質の追加と除外が同時に行われ、第一種指定化学物質の号番号も変更されたため、既存のSDSの更新が必要になる場面がありました。

物流事業者の立場では、荷主から化学品を預かる際に、SDSの提供を受けているか、最新の版であるかを確認することが、実務の基本になります。倉庫が自ら化学品を購入して他社に渡す場合を除けば、SDSの提供義務は主に荷主側にありますが、保管・輸送の安全確保のために、情報を受け取って活用する側の責任は小さくありません。

労働安全衛生法:化学物質の自律的な管理への転換

労働安全衛生法の関係政省令は、令和4年(2022年)に改正されました。厚生労働省のリーフレットによれば、「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令(令和4年政令第51号)」と「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号)」などの主要な内容は、次の四つのポイントにまとめられています。

[PR]
  • ラベル・SDSの伝達や、リスクアセスメントの実施義務の対象物質が大幅に増加します。国によるGHS分類で危険性・有害性が確認された全ての物質が、順次対象に追加されます。
  • リスクアセスメントの結果を踏まえ、労働者がばく露される濃度を基準値以下とすることが義務づけられます。厚生労働大臣が定める物質(濃度基準値設定物質)が対象です。
  • 化学物質を製造し、または取り扱う労働者に、適切な保護具を使用させることが求められます。皮膚への刺激性・腐食性・皮膚吸収による健康影響のおそれがないことが明らかな物質以外の全ての物質が対象です。
  • 自律的な管理に向けた実施体制の確立が求められます。化学物質管理者の選任や、リスクアセスメント結果等の記録の作成・保存などが含まれます。

施行は段階的で、厚生労働省の資料は、規制の変更を、2022年(令和4年)5月31日、2023年(令和5年)4月1日、2024年(令和6年)4月1日の3つの時期に分けています。化学物質管理者や保護具着用管理責任者の選任をはじめとする体制面の項目の多くは、2024年4月1日の施行です。リーフレットは、これまでの「法令で個別に定めた物質を、法令どおりに管理する」仕組みから、「事業者が自ら危険性と有害性を判断し、管理を選ぶ」仕組みへの転換を、「自律的な管理が今後の規制の基軸になります」と表現しています。

この制度は、化学品を製造する工場だけでなく、倉庫や物流拠点でも、化学品を取り扱う場面があれば関係し得ます。どの事業場に、どの義務が及ぶのかは、業種や作業の内容によって異なるため、厚生労働省の資料や所轄の労働基準監督署で確認する必要があります。本サイトでは、個別の事業場への当てはめは行いません。

GHS分類とSDSの16項目

GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)は、化学品の危険有害性を、世界共通の基準で分類し、ラベルとSDSで伝達するための国際的な仕組みです。国内では、日本産業規格(JIS Z 7253)が、ラベルとSDSの内容と様式を定めています。SDSは16の項目で構成され、物流の判断に直接関わるのは、次のような項目です。

項目番号項目名物流・保管での主な使いどころ
1化学品及び会社情報製品名、供給者、緊急連絡先の確認
2危険有害性の要約GHS分類の区分、ラベル要素の確認
3組成及び成分情報成分名、含有率、CAS番号の確認(混合物の区分判断)
5火災時の措置消火剤の選択、消火上の注意
6漏出時の措置漏れた場合の回収・拡散防止の手順
7取扱い及び保管上の注意混載できない物質、温度・換気などの保管条件
9物理的及び化学的性質引火点、沸点などの物性(消防法上の品名の判断材料)
10安定性及び反応性水との反応性、混触危険性の確認
14輸送上の注意国連番号、容器等級など輸送上の分類
15適用法令消防法、毒劇法、高圧ガス保安法、化管法などの該当状況

項目は16項目の抜粋です。全項目の様式は日本産業規格(JIS Z 7253)で確認してください。

この中で、消防法の品名を判断するために特に重要なのが、第9項の物理的及び化学的性質、とりわけ引火点の記載です。第4類の危険物は、引火点によって特殊引火物、第1石油類、第2石油類などの品名に区分され、その品名で指定数量が変わります。さらに、水溶性か非水溶性かの区別も、指定数量の数値に影響します。SDSの記載をもとに、品名と倍数を正しく読み取ることが、保管区分の出発点になります。

注意したいのは、SDSの「適用法令」の項目の記載は、作成者の判断に基づく情報であり、法令上の判断を代替するものではないことです。物流事業者が保管区分や貯蔵所の選択を行うときには、SDSの記載内容を確認したうえで、不明な点を荷主に問い合わせ、必要に応じて所轄の消防に確認します。

輸送時のイエローカード

危険物を運搬・移送するときには、事故の際の初期対応に必要な情報を運転者が手元に持つための書類として、イエローカード(緊急連絡カード)が使われます。埼玉県危険物事故防止連絡会の啓発資料によると、イエローカードは、危険物等の化学物品の性状、応急措置の方法、緊急連絡先などを記載した措置・連絡用資料です。運搬・移送中の事故は交通の混乱など社会に及ぼす影響が大きいため、迅速な対応が求められ、イエローカードの携行は、運転者等の適切な初期対応や、消防機関等に対する適切な情報提供を行う上で大変重要とされています。

同資料は、運用の手順として、危険物の運搬・移送の際にイエローカードを携行すること、運搬・移送する危険物をイエローカードで確認すること、運転席から見やすい場所に置くこと、事故発生時は消防機関等へ通報するとともに応急措置を行うこと、現場に到着した消防職員等にイエローカードの情報を提供することを示しています。記載例は、一般社団法人日本化学工業協会が作成したものが示されています。

消防庁も、立入検査の機会に、移動タンク貯蔵所や危険物運搬車両のイエローカードの携行状況を調査する様式を通知で示しています。この通知では、ガソリン、灯油、軽油、重油、廃油、動植物油類に係るものは調査対象外とされています。つまり、有毒性があるなど特殊な危険物を運ぶ場合に、携行の確認が重視される構図です。SDSの情報は、イエローカードの作成にも活用されるため、SDSが整備されているかどうかは、輸送の安全にも直結します。消防法は、移動タンク貯蔵所による移送では、その危険物を取り扱える危険物取扱者を乗車させることも定めています(第16条の2)。

【小比較表】SDS管理・AI抽出の公表サービスと事実項目

SDSをデータ化し、一元管理するサービスは複数あります。次の表は、公式サイトやプレスリリースで確認できた範囲で、提供元、提供形態、AI抽出の公表内容、主な機能の公表内容、実績の公表を並べたものです。機能の優劣や導入効果の評価は行いません。

サービス提供元提供形態AI抽出の公表内容主な機能の公表内容公表実績・備考
ケミカン SDS Manager株式会社ケミカンクラウドサービスAI-OCRと専門スタッフの目視を組み合わせ、SDS主要7章を99%の精度でデータ化すると記載SDSの一元管理、リスクアセスメントの一次スクリーニング、法令チェック導入事例に株式会社レゾナック(16,000件のSDS一元管理)、トヨタ自動車東日本株式会社を掲載
Dr.EHS Chemical株式会社アイアンドディー化学物質管理システムSDS登録をAI-OCRで自動化と記載SDSの16項目に対応、最新法令をAIがリアルタイム表示、CREATE-SIMPLEをシステム内で実施できると記載機能の詳細・価格は公式サイト参照
ESH Clouds Chemicals Management株式会社アイアンドディークラウドサービスAI-OCRによるSDSの自動登録。2024年12月19日のバージョンアップで読み取り精度向上を発表安全衛生・環境安全の業務を支援すると記載プレスリリースを公表(2024年12月19日)
Sotas化学調査Sotas株式会社クラウドサービス(プランは複数)既存のSDSをAIが解析し、成分名・含有率・物性情報などを自動でデータ化と記載SDS管理、SDSの解析・作成・更新までを支えるプランを案内化学素材企業向けとして案内。価格は公式サイト参照
AI JIMY(化学品管理の事例)運営会社は公式サイト参照バックオフィス業務のAI自動化プラットフォーム発行元ごとに形式の異なるSDSから、AIで項目を抽出する事例を紹介抽出結果を台帳と照合する運用の事例。最終判断は担当者が確認する運用と記載事例として公開
NITE-CHRIP(参考:公的データベース)独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)公的な化学物質総合情報提供システムAI抽出の提供なし(公的情報の検索システム)化学物質の法規制情報などを検索できるシステム公的機関による提供。無償の範囲は公式サイト参照

2026年10月時点、各社公式サイト・公開資料に基づく。最新情報は各社サイトで確認してください。

表の「AI抽出の公表内容」は、各社が自社サイトで述べている内容をそのまま要約したものです。精度の数値(たとえばケミカンの99%)は、各社が公表している数字であり、第三者が検証した結果ではありません。SDSの形式は発行元ごとに異なるため、実際の読み取り精度は、手元のSDSで試して確認する必要があります。NITE-CHRIPは民間サービスではなく、公的機関が提供する検索システムですが、法規制情報を調べる際の参照先として、比較の基準点に置いています。

SDS管理のDXで押さえたい実務の視点

公表資料から見えるSDS管理のDXの論点を、三つに整理します。

データ化の範囲と人の確認

AI-OCRや項目抽出は、SDSの成分名、含有率、CAS番号、危険有害性の区分などを自動で読み取ります。ただし、サービスの案内の中には、AIの抽出結果を台帳と照合し、最終判断は担当者が確認する運用を前提にするものがあります。ケミカンのように、AI-OCRと専門スタッフの目視を組み合わせる方式を案内するサービスもあります。物流の現場では、保管区分を誤ると事故につながるため、自動化した後にも、人が確認する工程をどこに置くかを設計する必要があります。

法令情報との連動

アイアンドディーのDr.EHS Chemicalは、最新法令をAIがリアルタイムで表示し、CREATE-SIMPLE(厚生労働省が提供するリスクアセスメント支援ツール)をシステム内で完結できると案内しています。ケミカンも、法令チェックの効率化を案内しています。労働安全衛生法の対象物質は順次追加されるため、台帳の物質ごとに、最新の法令の該当状況を確認できる仕組みは、運用の負担を左右します。

保管区分への落とし込み

SDSをデータ化するだけでは、倉庫の保管区分は決まりません。消防法の品名、指定数量、他法令の該当を、倉庫のどの区画に、どの倍数まで置くかという判断に結び付ける作業は、別に必要です。SDS管理のサービスと、倉庫管理システム(WMS)との連携や、危険物の倍数を自動で計算する機能の有無は、各社の公式サイトで確認する項目になります。

なお、通関や貿易に関する書類のDXについては、関連サイトの保税倉庫・通関DXが扱っています。

一次情報の確認先と次のページ

化学品の中でも、近年とくに保管の需要が増え、規制の見直しが進んだのがリチウムイオン電池です。次のリチウムイオン電池の保管規制と動向で整理します。

本サイトは危険物の保管・物流に関する制度と業界を公開情報から整理したものであり、個別の施設計画・保管方法・法令適用に関する助言ではありません。危険物の貯蔵・取扱いは消防法・市町村条例等により所轄消防の確認が必要です。各社のサービス内容は変更されることがあります。