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CHEMICAL LOGISTICS / 02

指定数量で読み解く、
危険物の保管規制。

危険物をどれだけ置くと、どの規制が働くのか。指定数量と倍数の考え方、屋内貯蔵所の基準、保安距離と保有空地を、政令の条文に沿ってたどります。

周囲に広い空地を確保して建つ、平屋の耐火構造の危険物貯蔵倉庫の外観写真

規制は法律・政令・省令・条例の四層でできている

最終更新日:

本ページは法令の条文と官公庁資料の内容を整理したものです。個別の施設や保管方法への当てはめは、所轄の消防本部・消防署への確認が必要です。ここでは「条文はこう定めている」という範囲にとどめます。

危険物の保管規制を理解する近道は、規制が四つの層に分かれていると知ることです。最上位が消防法という法律で、危険物の定義、貯蔵所の設置許可、危険物取扱者の制度などの骨格を定めています。その下にあるのが、危険物の規制に関する政令で、指定数量の具体的な数値や、貯蔵所の位置・構造・設備の技術基準を定めています。さらに、危険物の規制に関する規則(省令)と告示が、細かな寸法や試験方法、設備の仕様を補います。そして、指定数量未満の危険物については、消防法が市町村の条例に委ねています。

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この構造は、実務に二つの意味を持ちます。一つは、同じ品目でも「指定数量以上か未満か」で適用される法令の層が変わることです。指定数量以上なら消防法と政令・省令が直接適用され、指定数量未満なら各市町村の火災予防条例が基準になります。もう一つは、条例が市町村ごとに定められるため、少量の危険物については地域差が生じ得ることです。

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この規制全体を貫く物差しが「指定数量」です。次の節では、その定義と計算の考え方から確認します。危険物の区分や施設数などの前提は危険物倉庫とケミカル物流の全体像にまとめています。

指定数量と「倍数」の考え方

消防法第10条は、指定数量以上の危険物は、貯蔵所以外の場所で貯蔵してはならず、製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所で取り扱ってはならないと定めています。例外として、所轄の消防長または消防署長の承認を受ければ、10日以内の期間に限って仮に貯蔵し、または取り扱うことができます。指定数量は「危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量」と法第9条の4が説明しており、具体的な数値は危険物の規制に関する政令の別表第三が定めています。

ここで重要なのは、同じ場所に品名や指定数量の異なる複数の危険物がある場合の計算です。法第10条は、それぞれの危険物の数量を、その危険物の指定数量で割り、その商の和が1以上となるときは、その場所は指定数量以上の危険物を貯蔵し、または取り扱っているものとみなすと定めています。この「商の和」が、一般に「指定数量の倍数」と呼ばれます。

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第4類(引火性液体)の指定数量

物流現場で取り扱いの多い第4類について、別表第三の数値は次のとおりです。水に溶けるかどうか(水溶性か非水溶性か)で、指定数量が異なる品名があります。

第4類の品名性質(水への溶け方)指定数量
特殊引火物—50リットル
第1石油類非水溶性液体200リットル
第1石油類水溶性液体400リットル
アルコール類—400リットル
第2石油類非水溶性液体1,000リットル
第2石油類水溶性液体2,000リットル
第3石油類非水溶性液体2,000リットル
第3石油類水溶性液体4,000リットル
第4石油類—6,000リットル
動植物油類—10,000リットル

出典: 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)別表第三。

指定数量は、危険性が高い品名ほど小さな数値になっています。特殊引火物は50リットル、第1石油類の非水溶性液体は200リットルで、200リットル入りのドラム缶1本が、第1石油類の非水溶性液体の指定数量に相当します。一方、第4石油類は6,000リットル、動植物油類は10,000リットルと大きく、同じ量でも倍数が小さくなります。

第4類以外の指定数量(抜粋)

別表第三は、固体の類についてはキログラムで数量を定めています。第1類は、第一種酸化性固体が50キログラム、第二種が300キログラム、第三種が1,000キログラムです。第2類は、硫化りん、赤りん、硫黄が各100キログラム、鉄粉が500キログラム、引火性固体が1,000キログラムです。第3類は、カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウムが各10キログラム、黄りんが20キログラムです。第5類は、第一種自己反応性物質が10キログラム、第二種が100キログラム、第6類は300キログラムです。

倍数の計算の考え方(算術の例)

計算の考え方を示すため、条文の仕組みを使った算術の例を挙げます。実際の施設に当てはめた判断ではありません。

  • 第1石油類の非水溶性液体を400リットル、第2石油類の非水溶性液体を1,000リットル、同じ場所に置く場合を考えます。400÷200=2、1,000÷1,000=1で、商の和は3です。この場合の倍数は3となります。
  • 第1石油類の非水溶性液体を100リットル、第2石油類の非水溶性液体を400リットル置く場合は、100÷200=0.5、400÷1,000=0.4で、商の和は0.9です。1に満たないため、指定数量未満として扱われ、法第9条の4に基づく市町村条例の対象となります。
  • 個々の品名が指定数量未満でも、合計の商が1以上になれば、指定数量以上を貯蔵しているとみなされます。たとえば、第1石油類の非水溶性液体を150リットル(150÷200=0.75)、第2石油類の非水溶性液体を500リットル(500÷1,000=0.5)置く場合、商の和は1.25となり、指定数量以上の扱いになります。

実務では、混合物は成分や性状から品名が決まり、水溶性かどうかも温度条件の下で判定されます。製品ごとの区分は、安全データシートの情報と消防機関への確認で定める必要があります。保管方法の可否や置ける量の個別判断は、このサイトでは行いません。

貯蔵所の設置許可と完成検査

指定数量以上の危険物を貯蔵する屋内貯蔵所を設置するには、消防法第11条により、製造所、貯蔵所または取扱所ごとに許可を受ける必要があります。許可の権者は、消防本部と消防署を置く市町村の区域にある施設では市町村長、それ以外の市町村の区域にある施設では都道府県知事です。位置、構造または設備を変更しようとする場合も、同様に許可が必要です。

許可を受けて工事を行った後には、完成検査を受けます。市町村長等は、完成検査の申請があれば遅滞なく検査を行うこととされています(政令第8条)。完成検査で技術上の基準に適合していることの確認を受けてから、貯蔵を開始する流れになります。建設の段階では、設計、行政協議、許可申請、着工、完成検査という順序を踏むため、他の倉庫より準備の期間が長くなる傾向があります。建設会社の側にも、行政協議のノウハウを前面に出す企業があります。事業者の公表情報は危険物倉庫の建設・防爆設備・自動化の比較表で確認できます。

また、所有者等には、許可後の運営面の義務もあります。次の節以降で、まず構造基準を、その後に運営体制を整理します。

屋内貯蔵所の位置・構造・設備の基準の要点

危険物倉庫の多くが該当する屋内貯蔵所の技術基準は、政令第10条が定めています。主な項目を、条文の順に整理します。

  • 専用の建築物とする:貯蔵倉庫は、独立した専用の建築物とします。
  • 軒高と階数:地盤面から軒までの高さが6メートル未満の平家建てとし、床は地盤面以上に設けます。ただし、第2類または第4類の危険物だけの貯蔵倉庫で総務省令が定めるものは、軒高を20メートル未満とすることができます。
  • 床面積:一つの貯蔵倉庫の床面積は、1,000平方メートルを超えないこととされています。
  • 耐火性:壁、柱、床を耐火構造とし、はりを不燃材料で造り、延焼のおそれのある外壁は出入口以外の開口部を有しない壁にします。指定数量の10倍以下の危険物の貯蔵倉庫などには、緩和の規定があります。
  • 屋根:屋根は不燃材料で造り、金属板その他の軽量な不燃材料でふき、天井は設けません。
  • 窓と出入口:窓と出入口には防火設備を設け、ガラスを用いる場合は網入りガラスとします。
  • 床:第4類の危険物の貯蔵倉庫の床は、水が浸入し、または浸透しない構造とします。液状の危険物の貯蔵倉庫の床は、危険物が浸透しない構造とし、適当な傾斜を付け、貯留設備を設けます。
  • 換気と排出:必要な採光、照明、換気の設備を設け、引火点が70度未満の危険物の貯蔵倉庫には、内部に滞留した可燃性の蒸気を屋根上に排出する設備を設けます。
  • 避雷設備:指定数量の10倍以上の危険物の貯蔵倉庫には、総務省令で定める避雷設備を設けます。ただし、周囲の状況により安全上支障がない場合は、この限りではないとされています。
  • 標識と掲示板:見やすい箇所に、屋内貯蔵所である旨を表示した標識と、防火に関し必要な事項を掲示した掲示板を設けます。

これらの基準は、危険物を貯蔵する建物自体を「燃えにくく、燃え広がらず、漏れても広がらない」構造にするための項目です。たとえば、軒高と階数の制限、床面積の上限は、いったん火災が起きたときの消火の困難さを抑えるためのものです。また、床が液状の危険物を浸透させない構造であること、可燃性蒸気を屋根上に排出する設備があることは、第4類の危険物特有のリスクに対応した規定です。

なお、第2類または第4類の危険物だけを貯蔵する屋内貯蔵所のうち、平家建て以外の建築物で貯蔵するものについては、同条第2項に別の基準があります。階高を6メートル未満とし、一つの貯蔵倉庫の床面積の合計は1,000平方メートルを超えないこととされています。さらに、特例として、リチウムイオン蓄電池を貯蔵する屋内貯蔵所に関する規定も整備されています。この点はリチウムイオン電池の保管規制と動向で整理しています。

保安距離と保有空地:建物の外側に求められる条件

屋内貯蔵所の位置は、製造所の位置の例によると、政令第10条第1項第1号が定めています。その製造所の基準(政令第9条)は、住居や学校などの建築物等から、製造所の外壁またはこれに相当する工作物の外側までの間に、それぞれの建築物等について定める距離を保つことを求めています。これが「保安距離」です。条文が定める距離は次のとおりです。

保安距離の対象保つべき距離
住居の用に供する建築物その他の工作物(同一敷地内のものを除く)10メートル以上
学校、病院、劇場その他多数の人を収容する施設で総務省令で定めるもの30メートル以上
重要文化財、史跡などとして指定された建造物50メートル以上
高圧ガスその他災害を発生させるおそれのある物を貯蔵・取り扱う施設で総務省令で定めるもの総務省令で定める距離
使用電圧が7,000ボルトを超え35,000ボルト以下の特別高圧架空電線水平距離で3メートル以上
使用電圧が35,000ボルトを超える特別高圧架空電線水平距離で5メートル以上

出典: 危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号。防火上有効な塀を設けるなどして市町村長等が安全と認めた場合の特例があります。

もう一つの条件が「保有空地」です。屋内貯蔵所では、貯蔵倉庫の周囲に、指定数量の倍数に応じた幅の空地を保有することが求められます。条文の数値は次のとおりです。

指定数量の倍数壁・柱・床が耐火構造の場合それ以外の場合
5以下0.5メートル以上0.5メートル以上
5を超え10以下1メートル以上1.5メートル以上
10を超え20以下2メートル以上3メートル以上
20を超え50以下3メートル以上5メートル以上
50を超え200以下5メートル以上10メートル以上
200を超える10メートル以上15メートル以上

出典: 危険物の規制に関する政令第10条第1項第2号。隣接して設置する場合や、耐火構造の塀を設けるなどの措置を講じた場合に空地の幅を減じる規定があります。

保有空地は、延焼を防ぎ、消防活動に必要な空間を確保するためのものです。貯蔵する倍数が大きくなるほど、必要な空地の幅は大きくなります。敷地に余裕がなければ、倍数の大きな施設は建設できません。保安距離と合わせると、「広い敷地」と「周辺の土地利用」が危険物倉庫の立地を強く制約していることがわかります。ここが、倉庫不足の背景の一つです。

指定数量未満の危険物と、少量危険物の条例

消防法第9条の4は、指定数量未満の危険物について、貯蔵・取扱いの技術上の基準と、貯蔵・取扱いの場所の位置・構造・設備の技術上の基準を、市町村条例で定めると規定しています。これが、一般に「少量危険物」の規制と呼ばれるものです。条例は各市町村が定めるため、基準の詳細や届出の要件は自治体の火災予防条例で確認する必要があります。多くの市町村の条例は、指定数量の5分の1以上、指定数量未満の危険物を貯蔵・取り扱う場所を、少量危険物貯蔵取扱所として届出の対象にしています。

この「指定数量未満」の領域は、物流事業にとって実務上の意味が大きい部分です。小口の化学品、塗料、洗浄剤、アルコール類を扱う倉庫や配送拠点では、全体としては指定数量以上に達しなくても、拠点ごと、保管場所ごとの量が条例の届出対象になることがあります。また、前の節で見たように、複数の品名の合計の商が1以上になると、指定数量以上とみなされます。拠点を集約し、品目が増えるほど、倍数が上がりやすい構造になっています。

指定可燃物(わら製品、木毛、合成樹脂類など)の貯蔵・取扱いも、同じく条例の対象です。政令の別表第四は、綿花類を200キログラム、合成樹脂類(発泡させたもの)を20立方メートルなどと、数量を定めています。危険物そのものではないものの、倉庫の防火管理の視点では並んで確認する項目です。

許可後の運営体制:保安監督者・予防規程・定期点検

貯蔵所は、建てて終わりではありません。法は、一定の製造所等に、人と仕組みの両面から安全を維持する義務を課しています。

危険物取扱者と保安監督者

消防法第13条は、政令で定める製造所等の所有者、管理者または占有者に、甲種または乙種の危険物取扱者で、6月以上の危険物取扱いの実務経験を有する者の中から、危険物保安監督者を定めることを求めています。選任したときは、遅滞なく市町村長等に届け出ます。政令第31条の2は、この選任が不要な施設を除外して定めており、たとえば、屋内貯蔵所で指定数量の倍数が30以下のもの(引火点が40度以上の第4類の危険物のみを貯蔵するものに限る)は、選任の対象から除かれています。

また、製造所、貯蔵所及び取扱所では、危険物取扱者以外の者は、甲種または乙種の危険物取扱者が立ち会わなければ、危険物を取り扱ってはならないとされています。危険物取扱者の資格は、資格・安全・キャリアで整理しています。

予防規程

法第14条の2は、政令で定める製造所等の所有者等に、火災を予防するための予防規程を定め、市町村長等の認可を受けることを求めています。政令第7条の3は、対象に、指定数量の倍数が10以上の製造所、150以上の屋内貯蔵所、200以上の屋外タンク貯蔵所、100以上の屋外貯蔵所、移送取扱所、10以上の一般取扱所を挙げています。つまり、屋内貯蔵所では、貯蔵する倍数が150以上になると、予防規程の作成と認可が必要な水準に達します。

定期点検と事故時の措置

法第14条の3の2は、政令で定める製造所等の所有者等に、総務省令で定めるところにより定期に点検し、点検記録を作成して保存することを義務づけています。事故が発生した場合は、法第16条の3が、直ちに引き続く危険物の流出や拡散を防ぐなどの応急措置を講じること、事態を発見した者は直ちに消防署などへ通報することを定めています。

これらの運営体制は、倉庫事業者にとっては、荷主から預かる危険物の安全を担保するための基盤になります。物流事業者を比較する際は、設備の有無に加えて、有資格者の配置や運営体制がどう公表されているかも手がかりになります。公表されている範囲は主要事業者の比較表で確認できます。

一次情報の確認先と次のページ

法令の条番号や数値は、改正により変わることがあります。引用した内容は2026年10月時点で確認したものです。次は、危険物倉庫・ケミカル物流の事業者を事実項目で並べた主要事業者の比較表に進みます。

本サイトは危険物の保管・物流に関する制度と業界を公開情報から整理したものであり、個別の施設計画・保管方法・法令適用に関する助言ではありません。危険物の貯蔵・取扱いは消防法・市町村条例等により所轄消防の確認が必要です。各社のサービス内容は変更されることがあります。