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CHEMICAL LOGISTICS / 07

危険物を扱う仕事の入口を、
資格と試験データで確かめる。

危険物の保管や輸送の現場で求められる資格の区分、試験の受験者数と合格率、資格が使われる場面を、法令と消防試験研究センターの公表値で整理します。

倉庫の事務所の作業台に置かれたヘルメットと作業用手袋、クリップボード

危険物の現場で「人」に求められるもの

最終更新日:

本ページは法令と官公庁・試験実施機関の公表資料から確認できた内容を整理したものです。特定の資格講座や就職先の推奨、個別のキャリア助言ではありません。数値は出典の時点のものです。

危険物倉庫やケミカル物流の安全は、建物や設備だけでなく、人の資格と知識によっても支えられています。消防法は、製造所、貯蔵所及び取扱所において、危険物取扱者以外の者は、甲種または乙種の危険物取扱者が立ち会わなければ、危険物を取り扱ってはならないと定めています(第13条)。また、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)による危険物の移送には、その危険物を取り扱える危険物取扱者を乗車させることが必要です(第16条の2)。資格は、現場に立つための入場券であると同時に、法令が要求する体制の一部です。

このページでは、危険物取扱者の資格区分と試験のデータを中心に、隣接する資格(毒物劇物取扱責任者、高圧ガス製造保安責任者、フォークリフトの運転資格)を整理します。そのうえで、求人や待遇の情報をどこで確認できるかを示します。法令の全体像は消防法の保管規制と指定数量に、事業者の側から見た体制は主要事業者の比較表にあります。

危険物取扱者の区分:甲種・乙種・丙種

消防法第13条の2は、危険物取扱者免状の種類を、甲種、乙種、丙種の三つと定めています。危険物取扱者が取り扱うことができる危険物と、立ち会える危険物の種類は、免状の種類に応じて総務省令で定められています。免状は、危険物取扱者試験に合格した者に対し、都道府県知事が交付します。

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区分取り扱える危険物(概要)受験資格(法第13条の3)立ち会い・保安監督者
甲種すべての類の危険物大学等で化学に関する学科・課程を修めて卒業した者その他総務省令で定める者、または乙種免状の交付を受けた後2年以上の実務経験を有する者立ち会い可能。保安監督者の資格要件に該当(実務6月以上)
乙種(第1類〜第6類)免状に記載された類の危険物法律上、受験資格の制限は定められていません免状の類の範囲で立ち会い可能。保安監督者の資格要件に該当(実務6月以上)
丙種第4類のうち、ガソリン、灯油、軽油、第3石油類(重油、潤滑油など)、第4石油類、動植物油類法律上、受験資格の制限は定められていません立ち会いはできない。保安監督者にはなれない

出典: 消防法第13条、第13条の2、第13条の3。丙種の取扱範囲の詳細は総務省令(危険物の規制に関する規則)で確認してください。

物流の現場で最も関わりが深いのは、乙種第4類(引火性液体)です。ガソリン、灯油、塗料、溶剤、アルコール類など、第4類の品目は取り扱う機会が多いためです。第4類以外の類を扱う場合、たとえば第6類の過酸化水素や硝酸、第5類の有機過酸化物などを取り扱う拠点では、その類の免状を持つ者が必要になります。

保安監督者は、甲種または乙種の免状を持ち、6月以上の実務経験を有する者の中から選任します(第13条)。丙種は、保安監督者にも、他の者の取扱作業の立会いにも、なれません。このため、倉庫や配送拠点で危険物の管理に関わる立場を目指す場合は、乙種または甲種が前提になります。

試験の受験者数と合格率:公表データから見る難易度

危険物取扱者試験の実施状況は、消防庁の消防白書と、試験を実施する消防試験研究センターが公表しています。令和6年版消防白書によると、令和5年度(2023年度)の危険物取扱者試験は、実施回数が4,268回で、受験者数は31万5,915人、合格者数は12万2,942人、平均合格率は約38.9%でした。令和6年3月31日現在の、危険物取扱者試験合格者の総数は1,028万4,198人です。また、令和5年度の保安講習は、実施回数が1,541回、受講者数が18万1,204人でした。

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区分別の状況は、消防試験研究センターが公表する試験実施状況で確認できます。次の表は、令和8年(2026年)4月から8月までの実績と、前年度の同時期(令和7年4月〜8月)の値です。

区分令和8年4月〜8月 受験者合格者合格率(%)令和7年同時期 受験者合格者合格率(%)
甲種6,3732,22835.06,5592,18333.3
乙種第4類85,19228,98734.081,20625,42131.3
乙種計(第1類〜第6類)104,24641,63839.9100,45038,04337.9
丙種6,4363,13348.76,7843,40150.1
合計117,05546,99940.2113,79343,62738.3

出典: 消防試験研究センター「試験実施状況」(令和8年4月〜令和8年8月、前年度同時期との比較)。人数の単位は人。

この表から読み取れるのは、乙種第4類の受験者数が、乙種全体の約8割を占めること、合格率は乙種第4類が34.0%で、乙種計の39.9%より低めであること、丙種は受験者数が少ない一方で合格率は約49%であることです。乙種第4類の合格率について、島根県の公表資料は、令和5年度の全国値を32.0%と記載しています。年度や時期により変動はありますが、第4類の合格率は3割台前半から中ほどで推移しているという読み方ができます。

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ただし、これらの数字は試験の難易度そのものの評価ではありません。受験者の属性(受験回数、準備の度合い)や試験の実施方式によって、合格率は変わります。数値は、試験が一定の準備を要するものであることを示す参考情報としてとどめ、講座や教材の選択は、各自の判断で行うことになります。

資格が使われる場面:保安監督者・立会い・移送

危険物取扱者の資格は、現場の複数の場面で法令上の役割を担います。

危険物保安監督者

消防法第13条は、政令で定める製造所等の所有者等に、甲種または乙種の危険物取扱者で、6月以上の実務経験を有する者の中から、危険物保安監督者を定め、保安の監督をさせることを求めています。政令第31条の2は、選任が必要ない施設の範囲を定めており、たとえば、屋内貯蔵所で指定数量の倍数が30以下のもの(引火点が40度以上の第4類のみを貯蔵するものに限る)は除かれています。逆に、それを超える倍数の屋内貯蔵所や、引火点の低い危険物を扱う屋内貯蔵所では、保安監督者の選任が必要になり得ます。

取扱作業の立会い

危険物取扱者以外の者が危険物を取り扱うときは、甲種または乙種の危険物取扱者の立会いが必要です。倉庫のように、荷役を担う従業員が多い現場では、立会いの体制をどう組むかが運用上の課題になります。丙種の免状では、立会いはできません。

移動タンク貯蔵所による移送

タンクローリーで危険物を移送するときは、その危険物を取り扱える危険物取扱者を乗車させる必要があります。運転者が危険物取扱者である場合が多く、危険物取扱者は、乗車しているときは免状を携帯していなければなりません(第16条の2)。

保安講習

危険物の取扱作業に従事している危険物取扱者には、保安に関する講習の受講が求められる制度があります。令和5年度は、保安講習の受講者が18万1,204人に上りました。免状の取得は出発点であり、継続的な学び直しが制度に組み込まれていることがわかります。

危険物施設保安員

政令第36条は、指定数量の倍数が100以上の製造所や一般取扱所、移送取扱所のうち、総務省令で定めるもの以外のものに、危険物施設保安員を置くことを求めています。貯蔵所の中でも、屋内貯蔵所は同条の対象に挙げられておらず、施設の種類によって求められる人の体制が異なります。

隣接する資格:毒劇物・高圧ガス・フォークリフト・化学物質管理者

ケミカル物流では、消防法の危険物以外の法令にも関わるため、次のような資格や制度に触れる機会があります。

毒物劇物取扱責任者

毒物及び劇物取締法は、毒物劇物営業者に、毒物劇物取扱責任者を置くことを求めています。資格を得る方法は、薬剤師であること、厚生労働省令で定める学校で応用化学に関する学課を修了したこと、都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験に合格したことなどです。試験には、一般、農業用品目、特定品目の区分があります。倉庫や運送の事業で、毒物・劇物を保管・運搬する場合の義務の範囲は、事業の形態により異なるため、都道府県の窓口で確認する必要があります。

高圧ガス製造保安責任者

高圧ガス保安法に基づく免状で、高圧ガスの製造施設の保安の統括などを担う資格です。試験は高圧ガス保安協会などが実施し、化学、機械などの区分があります。倉庫や運送の現場で直接必要になる場面は限られますが、化学品の物流で高圧ガスを併せて扱う事業者や、関連する工場と連携する職種では、知識が求められる場合があります。区分ごとの受験者数や合格率は、高圧ガス保安協会の公表資料で確認してください。

フォークリフト運転の資格

倉庫の荷役に欠かせないフォークリフトの運転には、労働安全衛生法に基づく資格が必要です。最大荷重が1トン以上のフォークリフトの運転は、フォークリフト運転技能講習の修了などが必要で、1トン未満は特別教育の対象となるのが一般的です。危険物倉庫では、前のページで見たとおり、防爆性能を有する構造のフォークリフトの使用が、場所と危険物の品名によって求められます(建設・防爆・自動化の比較表)。運転者の資格に加え、危険物取扱者の従事または立会いが通知の条件に挙げられている点も重要です。

化学物質管理者

労働安全衛生法の改正により、リスクアセスメント対象物を製造し、または取り扱う事業場には、化学物質管理者の選任が求められる仕組みが整えられました。化学物質管理者の選任義務の対象と、講習の内容は、厚生労働省の資料で確認できます。詳細はSDS管理・化学物質規制とDXに整理しています。

キャリアと求人動向:公表統計で確かめる方法

危険物やケミカル物流に関わる仕事は、倉庫内作業、荷役・フォークリフト、タンクローリーなどの輸送、品質・安全管理、営業など多岐にわたります。求人の動向や賃金の水準は、職種や地域、時期によって変わるため、一つの数字で語ることはできません。本サイトでは、出典が確認できていない数値を掲載しないという方針のもと、数値は示さず、確認の方法を示します。

  • 職業別の求人の状況:厚生労働省の「一般職業紹介状況」には、職業分類別の有効求人倍率が掲載されています。自動車運転の職業、運搬・清掃・包装等の職業などの分類で、全体と比べた水準を確認できます。
  • 賃金:厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」で、職種別の賃金が公表されています。
  • 資格の取得状況:消防試験研究センターの試験実施状況が、危険物取扱者の受験者数と合格者数を、月別・都道府県別に公表しています。
  • 個別企業の採用情報:各社の公式サイトの採用情報や、ハローワークの求人情報で、必要な資格と業務内容を確認できます。

危険物取扱者の資格を持つ人材は、保安監督者の要件や、立会いの体制、移送時の乗車といった法令上の役割に直結するため、事業者にとっては配置が必要な人材です。個人の観点では、乙種第4類から始め、扱う類の幅を広げる方法や、毒物劇物取扱責任者、フォークリフト運転、化学物質管理の知識を組み合わせる方法が、公表資料から読み取れる選択肢です。どの方向が適しているかは、職場と関心によって異なります。

一次情報の確認先と次のページ

  • 消防法(第13条、第13条の2、第13条の3、第16条の2):e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する政令(第31条の2、第36条):e-Gov法令検索
  • 消防庁「令和6年版 消防白書」(危険物規制):消防庁
  • 一般財団法人消防試験研究センター「試験実施状況」:消防試験研究センター
  • 島根県の報道発表資料(令和6年12月6日、乙種第4類の合格率を全国値で記載):島根県
  • 厚生労働省(一般職業紹介状況、賃金構造基本統計調査):厚生労働省

以上で、危険物倉庫とケミカル物流を、全体像、規制、事業者、設備、情報管理、電池、資格の七つの面から整理しました。最初のページに戻って全体を見渡す場合は危険物倉庫とケミカル物流の全体像へ。最新の話題はブログでも取り上げています。

本サイトは危険物の保管・物流に関する制度と業界を公開情報から整理したものであり、個別の施設計画・保管方法・法令適用に関する助言ではありません。危険物の貯蔵・取扱いは消防法・市町村条例等により所轄消防の確認が必要です。各社のサービス内容は変更されることがあります。